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COLUMN

WEデザインスクール代表 稲葉裕美に聞いた
「ノンデザイナーはデザインをどう学ぶ?」

2017.10.27

インタビュー

インタビュー/ テキスト: 杉原環樹

デザインを、すべてのビジネスパーソンの基礎教養にしたい——。

2017年、そんな思いから開校したのが「WEデザインスクール」です。このスクールでは、昨今ビジネスの現場でも注目を浴びているデザインを、さまざまな分野で活躍する社会人が基礎から学ぶための場づくりが目指されています。

デザイナーを目指す人のための教育ではなく、デザインを理解し、活用したいと考えるより広い社会人のための学びとは? スクールが生まれた背景から、その裏にある哲学まで、スクールを主催する「OFFICE HALO」代表取締役の稲葉裕美に聞きます。

基礎となるデザインリテラシーを身につける

——WEデザインスクールでは、デザイナーを養成するためではなく、ビジネスパーソンに仕事で活かしてもらうための、デザインの学びが提供されています。はじめに、こうした学校を作ろうと考えた背景について聞かせてください。

稲葉:いま、ビジネスにおけるデザインの活用に、さまざまなかたちで注目が高まっていると思います。社会全体でも、デザインという言葉の魅力的で創造的なイメージから、「◯◯デザイン」と名の付くものが増えていますよね。でも、その盛り上がりが逆に混乱を招いて、「何がデザインなのかわからない」、「デザインって結局何なの?」と悩みを深くしている方も増えているんじゃないかと思います。

世界のビジネスを見渡してみると、デザインを活かした成功事例は多く見られます。日本でも2000年代に入るあたりから、企業でどのようにデザインを活かしていくのかという議論が長く続けられてきました。さらに近年では、デザイナーのプロセスや思考法を用いて製品・サービスを開発する手法も話題を呼ぶなど、「デザインには可能性があるんじゃないか」と考えるビジネスパーソンも増えてきていると感じます。

しかし日本においては、依然としてデザインの活用による成果は限られていて、デザインを使える人材が増えたといったような話はほとんど聞くことはありません。それは、「デザインには何かがありそうだ」ということは浸透してきたけれど、次の段階としてあるべき能力習得の部分、つまり、「結局、どうすればデザインが使えるようになるのか」という部分に、適切な解がないからではないかと思っています。

それに対して私たちは、すべてのデザイン活用の土台となるデザインリテラシー、「デザインを正しく理解して、活用する能力」を身につけるための場を提供することで、この状況を変えていきたいと思っています。

——デザインの活用がビジネスの課題になっている一方で、その学び方がわからない方が多いのではないかと?

稲葉:みなさん、「デザインを学ばなくては」という一種の焦りのようなものを持っていると思うんです。でも何から始めてよいのか分からないから、最初にいま話題の思考法やプロセスをやってみる、という流れになっているんじゃないかと思います。

しかし、デザイナーの思考法を学ぶなどのそうした学習は、デザインの実践においてはじつは発展的で、応用的な段階です。デザインの基礎がないまま、いきなりその段階から出発しても、思うような成果は出ず、「学んだのに、デザインが分からない」と逆にがっかりする結果になってしまう。WEデザインスクールの受講生にも、そうした経験をしたことから受講を決めたという方がいらっしゃいます。

あらゆる活用に先立って大切なのは、基本的なリテラシーを身に付けることです。デザインとはそもそも何かを理解することや、デザインの目的・役割を知ること、デザインの良し悪しとは何かが分かるようになることが重要だと、私たちは考えています。

——基礎的な学びがあってこそ、応用にも活かせるわけですね。

稲葉:「戦略や企画で活かしたいから、その部分だけを学びたい」というような声も聞きます。しかしそれは、基礎的なデザインリテラシーがあってこそできる、応用的な段階です。たとえば、マーケティングやオペレーション、財務や人事などについての基礎的な経営リテラシーがない状態で、一足飛びに経営戦略は立てられませんよね。

もちろんすべての分野においてプロフェッショナルになる必要はないですが、会社をコントロールするためには、それぞれの領域の役割や目的などを知っておくことや、その良し悪しを判断できる力を持っておくことは必須だと思います。デザインにおいても同様で、川上での活用を考える場合も、やはりまず基礎となるデザインリテラシーを学ぶ必要があると思います。

良質なインプットがデザイン体得につながる

——受講生にはどのような方々がいて、どんな動機を持たれているのでしょうか?

稲葉: 20〜40代の、働き盛りのビジネスパーソンの方が中心です。飲食業から保険業、製造業、ホテルのようなサービス業から行政、NPOまで、業種や職種はまさに多種多様ですね。デザインの学び場としては、かなり珍しいと思います。

みなさんがよくおっしゃるのは、たとえばあるデザインを採用するとき、判断の根拠や説得の言葉がわからず、上司などの直感で決まってしまうことへのモヤモヤだったり、デザイナーと協業するとき、共通言語がないために、うまくやりとりできないといった困難です。しかし、ふだんの仕事のなかでは、こういった同じ問題意識を持つ人に会うことはなかなかない。なので、受講生の方々は、まず同じ悩みを持つ人がいる、課題を共有できる、ということに喜ばれますね。

——デザインをめぐって、現場は思った以上に混乱しているんですね。

稲葉:デザインというのは、なんとなく格好よいから良い、自分が好きだから良い、そういうジャッジをするものだと思っている方も多いのではと思います。そう思ってしまうのは、いわゆるクリエイティブと呼ばれる領域は、一部の特別な人が天賦の才で行うものであり、勘や好みでつくられているものだという誤解があるからかもしれません。

しかしデザインには、もちろん感性的な部分もありますが、論理的な思考でできている部分も多くあります。また、デザインは、さまざまな知識や情報を足がかりにつくられるものであって、まったくの「無」から「有」を生み出しているわけではありません。だから、デザインの学びもほかの分野と同様に、既存の事例や知識を積極的にインプットすることが、その体得につながると考えています。情報に触れたり、体験することを通して、まずは良質なインプットを増やしていくことこそが、その学びには有効であるということをみなさんに知っていただきたいと考えています。

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